ありがたき日々

すばらしきかなこの世界

血のつながりとは幻想か?

血のつながりとは何か。

 

田中慎弥さんの共喰いを読みました。

 

 

共喰い (集英社文庫)

共喰い (集英社文庫)

 

 

 

あの記者会見での不遜な態度(に見える?)が話題になって以来ずっと気に

なっていましたが、電子書籍の使えるポイントもあり読んでみました。

どうしようもない父親、逃れられるようには思えない環境。

 

セックスの最中に相手の首を絞めたり、相手を傷つけることで苦しむ様子にさらに快感を感じる父親。嫌悪感を覚える対象が父親である。という現実。

 

その衝動が自分の中にあるかもしれないと気付いたときの絶望感。

 

血、遺伝とは何かを考えさせられます。

 

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物理的、物質的に材料がその親から供給されているのだから外見的に似るのは当たり前。性格や性向はどうでしょうか。

 

一卵性双生児の双子が里子に出され、別々の環境で育てられます。一卵性双生児ということはもともとの材料が同じということです。

 

アメリカのある例では、39年ぶりに再会した二人は様々な類似点がありました。

 

二人ともシボレーを運転し、ヘビースモーカーで銘柄はセーラム。改造カーレースが好きで野球は嫌い。そればかりか二人とも離婚歴があり、最初の妻の名はどちらもリンダで、二番目の妻はどちらもベティ。一方は長男をジェイムズ・アラン(Alan)、他方はジェイムズ・アラン(Allan)と名づけた。さらに飼い犬の名前はどちらもトイだった。

 

(橘玲著、残酷な世界で生き延びるたった一つの方法から抜粋)

 

 

 

残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法

残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法

 

 

 

例はちょっと極端で眉唾だが、これに似た例が世界でたくさん報告されているらしい。

 

私たちは血や遺伝というものから逃れられないようです。しかし共喰いに出てくるような逃げ出してしまいたいような関係性は現実としてあるわけです。

 

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自民党の憲法改正草案に’家族は仲良くしなければならない’みたいな内容が盛り込まれているそうです。(立憲主義からして本質がまちがっているように思えるのだが。)

 

儒教にもいえることなのですがこういう血族主義、家族主義というのは国家が国民を統治するのに都合がいいわけです。小さい単位できちんとまとまってくれたほうがいいから。でもそんなことは強制されるすじあいはなく、個人が判断して血がつながっていようがなかろうが、尊敬できるならする、好きなら好きそれだけでいいのではないでしょうか。

 

 

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先日婚外子をめぐる裁判で婚外子を不当に扱うのは違憲という判決がでました。空気が変わってきているように思います。不倫の関係が多くなり風紀がみだれるのではという懸念も聞こえますが、多様性が広がるという利点はあると思います。

 

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お釈迦様は執着を捨てるためにまず親子の縁を切ったといいます。今ある常識に目を向けじっくり考えてみることが自分の精神を開放するひとつの方法なのかもしれません。

 

ありがとうございます。